黎明へ至る青

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第24話 聖王国へ

リューディアもマドンネンブラウへ向かう道中であったらしく、一行はともに国境へと向かうこととなった。 「聖者さんたちがいてくれてよかったぜ」 軽い足取りで先頭を進むリューディアは、当初は商人の護衛として国境越えを目指していたらしい。ところが別...
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第23話 過去

パレルモを発ち、聖王都ドナウへ向かう道すがら、アサレラはロモロの背中に問いかけた。 「ロモロさん、よかったんですか?」 先頭を行くロモロが肩越しに振り返った。 「なんのことかな、アサレラ殿」 空一面を覆う雲の奥に、太陽の気配がわずかにうかが...
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第22話 聖剣の威光

四人掛けの卓を囲むアサレラたちを、不穏な静寂と料理の香りが包んでいる。 たちというのは、フィロとロモロ、そして、例の神官だ。 周囲の客が聖者様が聖剣を抜く瞬間に立ち会えてよかっただの、あの剣士はどこかで見たことがあるだのと騒ぎ立てている中、...
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Uneasy lies the head that wears a crown.

魔王パトリスは聖剣レーゲングスの下に散った。 魔物の脅威は去り、イーリス大陸の未来は明るいものとなるだろう。 だというのに、アサレラの心は晴れなかった。 「アサレラ殿」 目の前に聳える塔を茫然と見上げていたアサレラは、その声で我に返った。 ...
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第21話 罪と約束

「…………抜けた……」 アサレラが白い光を湛える剣身を呆然と眺めていると、紺色のローブの裾を揺らして神官が駆け寄ってくる。 「なにを呆けているのです! 早くその方を治療しなくては!」 背負った杖を手に取る神官がミーシャの傍らへ膝をつく。横顔...
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第20話 エステバン杯(後編)

――パトリスだと……!? ばくばくと拍動する胸の底で魔王の名が反響する。 平穏だった大陸に魔物が跋扈していることが魔王復活の兆候といえど、魔王そのものを見た者はいなかった。少なくともトラヴィスはそう語っていた。ローゼンハイムの民は破滅の光の...
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第19話 エステバン杯(前編)

フラウィウス闘技場の内部は、試合を待ち望んでざわめく観客たちの熱気で蒸されている。 アサレラは観客席を見上げた。最下部の平らな部分――アリーナをぐるりと取り囲むような観客席は四階建てになっている。 これ以上見上げていたら首が痛くなりそうだ。...