黎明へ至る青

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第11話 名前

「…………え」 一拍遅れて言葉の意味をとらえ、アサレラは伸ばしかけた手を止めた。 ロモロの口調は質問ではなく確認だった。 それらしき振る舞いをした覚えは、アサレラにはない。だというのに、アサレラの正体をどこで確信したのだろうか。 アサレラの...
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第10話 残光

空の色が赤い。 地平線の果てへ没する太陽と、大地を包む業火のために。 燃えさかる輪が空中で絶え間なく回転し、無数の炎を雨のごとく地上へと降り注いでいる。 背後から迫る炎の渦から逃れるべく、アサレラは走った。 どこへ向かっているのか、そもそも...
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第9話 再会

気がつけばアサレラは、午後の日差しあふれる賑やかな表通りに戻って来ていた。 アサレラの目の前で、多くの人間が行き来している。その光景を見続けるアサレラの胸が、にわかに痛む。 ――ミーシャの言う通りだ。確かに、おれは変われない……。 おのれが...
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第8話 決別

表通りと異なり、路地は細く狭い。人が二人並ぶのがせいぜいといったところだろう。分岐点はなく、身を隠せそうな場所もない。 気配を殺しながらも、アサレラは足早に進んでいく。 ほどなくして突き当たった壁面に、女性は逃げ道を塞がれ、追い込まれていた...
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第7話 予兆

カタニアの町は人々の賑わう声であふれていた。 幾分やわらいだ午後の日差しが石畳に降り注ぐ。中央に一本線が引かれ、その左右に細長い石が敷き詰められた石畳は、コーデリア王国では見られなかったものだ。 コーデリアと異なるのは、もちろん石畳だけでは...
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第6話 待ち人

広大な川に架かるには心もとない木をどうにか渡り終えたとき、フィロは裾を翻しさっさとカタニアの町へ行こうとしていた。 「待て。あそこに寄るぞ」 フィロが足を止め振り返ったところで、アサレラは川のほとりにある小屋を指した。 茂みの中にぽつんと佇...
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第5話 国境

夜が明け、辺りが明るくなると、二人はすぐさまカタニアへ向けて出発した。 並び歩くアサレラとフィロのあいだには幾分かの距離がある。 もともとアサレラは饒舌ではないし、フィロはアサレラに輪を掛けて無口、おまけに無表情で無愛想なものだから、会話が...