黎明へ至る青

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第18話 人たるに値するもの

イスベルが優雅に立ち去ったとき、フィロを伴ったロモロが戻ってきた。 「待たせたな」 夕日の中に佇む二人はまぶしく、アサレラは目を眇めた。 「い、いえ。……リューディアは?」 「宿に行くと言っていた。明日、試合でまみえるかもしれないな」 微笑...
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第17話 素性

裾のすり切れた、明るい色合いの外套。ごく簡素で動きやすそうな旅装。まったく飾り気のない皮製の胸当ての上へきらきらと透き通った葡萄色の光を落とす首飾りが、いやに装飾的で目を引いた。 もしかして、とアサレラは目を眇める。おれたちを外国人と見て、...
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第16話 覚悟を問う

あれから何匹か魔物に遭遇したが、すべてロモロが片付けてしまった。 魔物を確実な一撃で葬るロモロの動きは、流れるように無駄がない。 有り体に言えば、アサレラの出る幕はまったくなかったのだ。 「……ロモロさん、って、すごく強かったんですね」 こ...
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第15話 起伏

ウルティアの地は起伏に富み、固い凹凸がブーツ越しに足裏を押し上げる。 天頂の太陽に照りつけられる山肌は岩のようで、土と緑に覆われた故郷の山とはずいぶん異なる。 額の汗を拭い、アサレラは足を止め振り返った。 「ロモロさん、フィロ、だいじょうぶ...
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第14話 出発

寝台へ横臥したアサレラは、目を閉じながらも眠っているわけではなかった。 もともと眠りが浅いせいで、なかなか寝入ることができずにいるのはアサレラの常だ。 だが今、アサレラが眠れずにいるのは、おのれの短慮に苛まされているためだ。 ――おれが余計...
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第13話 失敗

女性の目は、まっすぐロモロを見つめている――ということは、ロモロの知り合いなのだろうか。 アサレラは、ひそかに拳を握りしめた。 彼女の素性がどうであれ、すぐ背後に立たれて気がつかないなど、剣士の恥さらしである。 思い返せば、当初からおかしか...
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第12話 分岐点

ロモロは、アサレラのグラスが空になると、すかさず注ごうとする。アサレラが遠慮しても、親しみ深い笑顔とともにアサレラの警戒心をほどいてしまう。 注がれるままに飲み干していった結果、アサレラは、これが何杯の葡萄酒なのかわからなくなっていた。 だ...