黎明へ至る青

序章 光輝の手は復讐のために

第5話 国境

夜が明け、辺りが明るくなると、二人はすぐさまカタニアへ向けて出発した。並び歩くアサレラとフィロのあいだには幾分かの距離がある。もともとアサレラは饒舌ではないし、フィロはアサレラに輪を掛けて無口、おまけに無表情で無愛想なものだから、会話が弾む...
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第4話 二人旅の始まり

薄闇の中でさらに暗く、連なる山々の稜線が浮かび上がっている。アサレラはマントをなびかせながら、足下にまとわりつくスライムの集団を斬って捨てた。この辺りは夜になるとおそろしいほどの暗闇に覆われる。幸い今夜は月が出ているので、なにも見えないとい...
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第3話 邂逅

セイレム村に残されたのは、焼かれた地面へ倒されたすすけた木と、積み重なった瓦礫であった。やはりというべきか、焼け爛れた死骸は片付けられている。村の中を進むアサレラの影が、足下で濃く長く伸びる。西へ傾いた日は、すべてを赤く染め上げている。あの...
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第2話 聖者

アサレラはコーデリアの地を歩いていた。アサレラの購入した黒いマントにはフードがついているので、ひと気のある場所ではそれをかぶることにした。重装で身を守りながら戦うのは、やはりアサレラには合いそうもない。王都オールバニーを北上するとラング大橋...
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第1話 銀の髪の剣士

重い頭が左右にふらつくのを、アサレラは感じていた。「どうだい、兄さん。そのヘルム、古代のウルティア兵が使っていたというものだよ」アサレラの頭部をすっぽりと覆う兜は確かに頑強だが、その分だけ鈍重である。視線をあげた矢先に目を射る初秋の澄んだ日...
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プロローグ

先ほどまで地上を赤く照らしていた太陽はすでに西へ傾き、空には夜の闇が満ち始めていた。星のひとつも見えない暗い空の下を、銀髪を振り乱して青年が駆けて行く。呼吸は乱れ、瞳が焦燥に歪む。激しい長距離走行に音をあげたブーツの底が半分以上めくれかかっ...