序章 光輝の手は復讐のために 第5話 国境 夜が明け、辺りが明るくなると、二人はすぐさまカタニアへ向けて出発した。並び歩くアサレラとフィロのあいだには幾分かの距離がある。もともとアサレラは饒舌ではないし、フィロはアサレラに輪を掛けて無口、おまけに無表情で無愛想なものだから、会話が弾む... 2020.07.05 序章 光輝の手は復讐のために黎明へ至る青
黎明へ至る青 第4話 二人旅の始まり 薄闇の中でさらに暗く、連なる山々の稜線が浮かび上がっている。アサレラはマントをなびかせながら、足下にまとわりつくスライムの集団を斬って捨てた。この辺りは夜になるとおそろしいほどの暗闇に覆われる。幸い今夜は月が出ているので、なにも見えないとい... 2020.07.04 黎明へ至る青序章 光輝の手は復讐のために
黎明へ至る青 第3話 邂逅 セイレム村に残されたのは、焼かれた地面へ倒されたすすけた木と、積み重なった瓦礫であった。やはりというべきか、焼け爛れた死骸は片付けられている。村の中を進むアサレラの影が、足下で濃く長く伸びる。西へ傾いた日は、すべてを赤く染め上げている。あの... 2020.07.03 黎明へ至る青序章 光輝の手は復讐のために
黎明へ至る青 第2話 聖者 アサレラはコーデリアの地を歩いていた。アサレラの購入した黒いマントにはフードがついているので、ひと気のある場所ではそれをかぶることにした。重装で身を守りながら戦うのは、やはりアサレラには合いそうもない。王都オールバニーを北上するとラング大橋... 2020.07.03 黎明へ至る青序章 光輝の手は復讐のために
黎明へ至る青 第1話 銀の髪の剣士 重い頭が左右にふらつくのを、アサレラは感じていた。「どうだい、兄さん。そのヘルム、古代のウルティア兵が使っていたというものだよ」アサレラの頭部をすっぽりと覆う兜は確かに頑強だが、その分だけ鈍重である。視線をあげた矢先に目を射る初秋の澄んだ日... 2020.07.03 黎明へ至る青序章 光輝の手は復讐のために
黎明へ至る青 プロローグ 先ほどまで地上を赤く照らしていた太陽はすでに西へ傾き、空には夜の闇が満ち始めていた。星のひとつも見えない暗い空の下を、銀髪を振り乱して青年が駆けて行く。呼吸は乱れ、瞳が焦燥に歪む。激しい長距離走行に音をあげたブーツの底が半分以上めくれかかっ... 2020.07.03 黎明へ至る青序章 光輝の手は復讐のために