黎明へ至る青

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第32話 復讐

胸が苦しい。吹き付ける熱風の中、どうにか瞼を押し上げる。赤く燃える空へ砂塵が舞う。濃厚な硝煙が上がる先で、星がかすかに瞬いている。固い地面に横たえられた身体を動かすこともままならず、視線だけを動かす。胸の辺りで、黒い炎のようなものが立ちのぼ...
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第31話 1+2

中庭を横切り、回廊を進む。差し込む日射しはずいぶん翳り、日没が近いことを伝えてくる。嫌悪と悔恨が胸の底でわだかまるのを、アサレラはかえって冷静な思いで見つめた。発端となったアデリスの失踪は、誰のせいでもなかったのだ。だからって、あいつらの所...
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第30話 預言者の末裔

窓から差し込む午後の日射しを受け、神官の持つ青色の布が光沢を放つ。「わたしはミカヤ。神官です」腕を伸ばせば触れられるほどの距離に差し掛かったそのとき、かつん、とひときわ高く踵を鳴らし、神官ミカヤは足を止めた。ロモロやイスベルよりいくつか年下...
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第29話 聖王家

「アサレラ殿! 右!」ロモロの声が飛ぶ。とっさに構えた剣は鋭い突きを受け止めた。指先がじんと痺れる。ロモロの細剣が繰り出す突きは熾烈で速い。攻勢に転じるきっかけを見出そうと、アサレラは剣戟を踏みこたえた。――今だ!アサレラは剣を振り下ろした...
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第28話 夜明け

声が聞こえる。「…………この子の……前、考……て……れた……」どこまでも続く闇は深く、重く、そして、少しだけ暖かい。「本当に僕の……えた名……でいい………そう……の苦手な……きみも知って……だろ……」「もちろんわたしも……考え……けど………...
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第27話 秘密

音という音が消えてしまったのかと思うほどに静まり返るクルトの町を、アサレラとロモロは進んでいた。今にも崩れ落ちそうな小聖堂で夜を明かすのは危険だと主張するアサレラへ、ロモロは黙って頷き、眠ってしまったフィロを背負ったのだった。聖痕の輝きが消...
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第26話 業火

逃げ場のない風が烈しく渦巻き、小聖堂が内側から悲鳴をあげる。当然、その渦中にいるアサレラへも暴風は容赦なく襲いかかり、骨を砕かれるような痛みが全身に走る。吹き荒れる風の唸り、軋む建物の音、盗賊たちの叫喚。それらが重なり合い、異様な歌のように...