第四章 星の名も知らずに

黎明へ至る青

第44話 古傷

冷えた風が濡れた身体を突き刺し、冷気が骨まで染み入る。 だが今、アサレラの背筋が震えるのは、そのためだけではなかった。 「…………ローゼンハイム…………」 「ローゼンハイムの記憶は、オレにはないがな」 「……それは……生まれてすぐ、追放され...
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第43話 炎

一行は夜が明けきらないうちにサヴォナローラの王都ラグナを経った。 ラ・ロッサ山脈を越え、遥か北のローゼンハイムの大地を踏むべく進むアサレラの心は重かった。 ――アサレラ。おまえがどこへ行こうと、おまえの行き着く先にパトリス様はいらっしゃる…...
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第42話 夜明け前

「リューディア!」 「おう!」 放たれた矢のように素早く飛び出したリューディアが、戦斧を振り回してゴーレムの足に叩きつけた。 少し遅れて駆け出したアサレラも、反対側の足を斬りつける。固い衝撃が剣から左腕へ走る。刃は少しも食い込まずにゴーレム...
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第41話 恋

聖剣を構えるアサレラへ、ジョンズワートはやれやれと肩をすくめた。 「剣を納めなさい。こんな街中で戦うつもりですか?」 視線だけを周囲へ向ければ、アサレラとジョンズワートの周辺を避けるように行き交う人々が、怪訝そうにこちらを窺いながら、巻き込...
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第40話 オアシスの町

元気づけようとしているのか、デシレーはしきりにリューディアへ話しかけている。 話すことを禁じられたリューディアの代わりに受け答えをするのはエルマーだ。嘘が露呈したときにうまく取りなすつもりだろう、ロモロは少し後ろから見守っている。 アサレラ...
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第39話 九死に一生

日のあるうちは遮るもののない日射しが容赦なく降り注ぎ、日が沈めば日中の暑さが嘘のようにきつく冷え込む。そしてまた日が昇れば、夜の冷気を消し去るように太陽が照りつける。 風が吹き付ければ舞い上がった砂が視界を塞ぎ、時には目も開けられないほどの...
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第38話 再出発

見渡す限りどこまでも広がる砂漠は、以前ウルティアで見下ろした海にどことなく似ている。 遮るもののない一面の砂に、足元で影が長く伸びる。風が吹きつければ砂が白く巻き上がり、背後で防砂林がざわざわと揺れる。 定まらない地平線の果てに丸い月が見え...