短編小説

短編小説

雷と太陽

窓の外が光った。 少し遅れて轟く雷鳴に、女子の甲高い悲鳴が重なる。 妙に通る女子の叫び、オレ傘持ってきてねえよと騒ぐ男子、静かにしろという先生の一喝。窓ガラスを叩く雨粒の音がそれらを遠ざける。 わたしは外を見た。雨のために白く霞む校庭...
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月と海

歌が聴こえる。 甘やかな中にどこか憂愁を帯びる、澄み切った歌声が。 ウルリヒは手元へ落としていた視線をゆっくりと上げた。 海を渡る風は、潮の匂いとともに歌声を運んでくることがある。半人半魚の怪物、海に棲まうローレライの声だ。 ローレ...
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償いの白薔薇

その人が店を訪れるのは、決まって二十四日の夜だった。 雨の降りしきる日は革靴のつま先を濡らし、風の止まない日は髪を乱し、雪のちらつく日はスーツの肩を白くし、その人は狭い店内へ規則正しい靴音を響かせる。 そして今日もまた。 軽やかな鈴の...
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愛しい気持ちを照らす夕日

郁に手を引かれて、どれほど走っただろう。 目を射る西日に視線を動かす。沈みかかった夕日は稜線をくっきりと浮かび上がらせ、川の水面に金色の光をキラキラと落としている。すぐにでも越えられそうな低い欄干が鈍い光を放ち、わたしの焦りを追い立てる。...
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どぜう

夏祭りでドジョウをすくった。 赤いヒレを水中で揺らめかせる金魚は確かに妖艶だが、わたしは他の女子たちの後追いをしたくはなかった。たとえこちらにそのつもりがなくても「歩美ちゃんの真似っこ!」などと囃し立てるに違いない。 会場の一角でドジョ...
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願い星ひとつ

If you don't wish upon a star, your dream doesn't come true. ――斉藤杏子は、生きる辛さに耐えられなくなったから、死にます。 そう書き残してから死のうと思ったのに、書けそう...
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