第三章 暁は光と影を分かつ

黎明へ至る青

第37話 魔人審問(後編)

「なっ、なんだって!? どうして……!」 「宿で部屋を取ってたら騎士たちが来て、フィロに魔人の容疑がかかってる、なんて言って……違うって言ったのに聞いてくれなくて、そのまま連れて行っちまったんだ!」 話しているうちに興奮してきたらしく、リュ...
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第36話 魔人審問(前編)

薄紫色の髪がゆるやかに流れる背中とそれを追う小柄な背中が、突如として動きを止めた。 不思議に思いながらも二人に追いついて、アサレラはその理由を知った。 「……エルマー? 旅立ちの許可はもらえたのか?」 問いかければ、エルマーはええ、と言葉少...
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第35話 同情

「では、食事を終え次第レヴィンへ向かいましょう」 「レヴィン……って、サヴォナローラとの国境の町……だよな」 食事を進めるうちに、アサレラの気持ちはいくらか凪いでいた。 「ええ。砂漠を越えるために必要なものは、ドナウよりもあちらのほうが揃っ...
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第34話 追憶

外へ出ると、目の前の通りを人々が賑わしく行き交っている。アサレラが宿の裏手へ回ると、エルマーも黙ってついてくる。 賑やかな声や行き交う足音が遠くなる。少し開いた勝手口の扉からは、炊事の煙がたなびいている。 「エルマー王子。聖王国は、魔術士…...
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第33話 真実の欠片

耳元で風がごう、と唸る。 双子。兄への復讐。ジョンズワートの言葉が頭の中で旋回する。 「おまえはなにも知らないのですね。いえ、なにも知らされていない、と言うべきか」 発するべき言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くすアサレラへ、ジョンズワートが哀れ...
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第32話 復讐

胸が苦しい。 吹き付ける熱風の中、どうにか瞼を押し上げる。 赤く燃える空へ砂塵が舞う。濃厚な硝煙が上がる先で、星がかすかに瞬いている。 固い地面に横たえられた身体を動かすこともままならず、視線だけを動かす。胸の辺りで、黒い炎のようなものが立...
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第31話 1+2

中庭を横切り、回廊を進む。差し込む日射しはずいぶん翳り、日没が近いことを伝えてくる。 嫌悪と悔恨が胸の底でわだかまるのを、アサレラはかえって冷静な思いで見つめた。 発端となったアデリスの失踪は、誰のせいでもなかったのだ。 だからって、あいつ...