運命のマリオネット

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第七章 カーテンコール

アルドリドは大きく踏み込んだ。 迷いのない剣は直線を描き、暗闇を裂く。 ――これで、すべてが終わる……! 閃かせた剣は悠然と佇むままのクローティアを捉える――はずだった。 「…………な……」 突然、身体を後方へ強く引かれるような感覚があった...
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第六章 マリオネットの糸

薄紫色に染まった天蓋へ火の粉が舞い上がる。 エルシーの身体を包む金色の炎が火柱となって立ちのぼる。 白い花が紙屑のように焼えても、金色の花は炎へ共鳴するように光を放つ。次々に湧出する光がその強さを増し、辺りは強烈な光に呑まれる。 目がくらみ...
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第五章 舞台装置

聖剣を通して伝わるのは、皮膚を破り、肉を削り、骨を割る感覚だった。 魔力の供給源を絶ち、時間の遡行を防ぐ。そのためにこの身体を完膚なきまでに叩きのめさなければならない。 急き立てられるように、追い詰められるように、ひたすらに剣を振るい続けて...
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第四章 テキスト・レジー

「じゃあ、アルドリドはもう何度も魔王フィービーと戦ってたの?」 ひとまず礼拝堂からエルシーにあてがわれた部屋へと移動し、二人は長椅子に隣り合って腰掛けた。 二人のあいだを立ちのぼる一つ分のカップの湯気が、エルシーの輪郭をうっすらと滲ませる。...
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第三章 明転

甘やかな香りが鼻腔をくすぐる。閉じた瞼の上がいやに明るい。 アルドリドはゆっくりと目を開けた。 「…………ここは……どこだ」 アルドリドが半身を起こすと、花びらや葉がぱらりと舞った。 やわらかな光を照り返す金色の花々がどこまでも広がっている...
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第二章 踊る人形

轟く雷鳴に足が竦む。アルドリドはこわごわと振り返った。 夕映えを照り返して連なる山脈の向こう、王都から硝煙が立ち上ぼっている。 「殿下、こちらです!」 先導する騎士が、立ち竦んだアルドリドを叱咤するように声を張り上げた。 城を脱出する際に託...
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第一章 アンコール

植物が朽ち果てていくような青い臭いが満ちている。 石造りの回廊の奥は、わずか先も見えないほどに暗い。アルドリドは聖剣アトロフォスの光だけを頼りに進む。壁に左手を添えると、湿った感触が伝わってくる。 謁見の間へ通じる重厚な扉を開けば、目的の人...